ピロリ菌と胃

 正式にはヘリコバクター・ピロリ菌といいます。胃粘膜に感染することで、萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫等の原因となるといわれています。また胃がんの9割以上がピロリ菌が原因であると報告されています。
 日本人では3人に1人が感染しているといわれ、経口で感染することがわかっていますが、それ以外の感染経路や予防方法はわかっていません。ピロリ菌は4・5歳以下の免疫が弱い時期に感染するといわれています。

ピロリ菌の診断

胃粘膜生検

迅速ウレア―ゼ法 
 内視鏡によって胃の粘膜を採取し、ウレアーゼというピロリ菌が持つ酵素を検出してピロリ菌に感染しているか診断します。ウレアーゼは尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解しますので、アンモニアに反応して色が変わる試薬に採取した粘膜を入れて判断します。

抗体検査
 ピロリ菌に感染した際に体内につくられる抗体を調べる検査です。尿や血液から抗体の有無を調べます。

抗原検査
 便に含まれるピロリ菌の構成成分である抗原の有無を検査します。

尿素呼気試験
 試験薬を内服し、その前後の呼気を調べてピロリ菌の有無を確認します。感度・特異性ともに高く、検査時間も30分程度とすぐに結果が出ます。除菌後の判定検査にも用いられます。

ピロリ菌感染検査の保険適用について

 ピロリ菌の感染検査は以下の場合、健康保険が適用になります。

  • 内視鏡により早期胃がんやピロリ菌による萎縮性胃炎が見つかった
  • 胃・十二指腸潰瘍の治療中もしくは治療既往がある
  • 胃MALTリンパ腫、突発性血小板減少性紫斑病がある

除菌治療

 胃薬と抗菌薬を服用することで行います。2種類の抗菌薬と胃薬の計3種類の薬を朝・晩の2回、7日間服用します。服用終了後6〜8週間で尿素呼気試験をして除菌が成功したか確認します。一次除菌の成功率は90%と高いですが、失敗した場合には二次除菌を行います。二次除菌は抗菌薬を替えて再度同様の手順で除菌を行います。
 副作用として肝障害、軟便・下痢、味覚異常などが報告されていますが、除菌薬服用を終了すればほとんど治まります。症状がひどい場合にはご相談下さい。また、アレルギー反応として発疹やかゆみが起こる場合があります。発疹がきつい場合は直ちに服用を中止し、ご連絡下さい。

除菌後も注意が必要です!

 除菌を行うと、その後の萎縮性変化の進展は抑制されますが、除菌までの萎縮によって蓄積された胃癌発生リスクは残ると言われています。ピロリ感染の方は未感染者の150倍くらい胃癌になりやすいですのですが、除菌後も1/3は胃癌発生の可能性が残ります。 
 除菌時に胃粘膜の萎縮が強いほど、その後の癌発生率が高いと言われています。萎縮が軽度の人の癌発生率は年0.04%、中等度萎縮は0.21%、高度萎縮は0.61%と言われています。そのため、除菌後も1年に1回は胃カメラでの検査をお勧めします。